どんよりと憂鬱な空気の漂う月曜日。

いつもなら持ち前の厚かましさでそんな空気を振り払っている誰かさんが、今日は部活に来なかった。


いや、そもそも学校に来ていなかったことを家に帰り着いてから俺は知ることとなった。


ーーーパシャ、パシャ


四角く切り取られた画面の中、鬱陶しいほど瞬くフラッシュを浴びながらあいつは父親の横に立っている。


『…では早速、最優秀賞を受賞した近藤光太郎さんと、今回の作品のモデルとなった娘さんである莉穂さんにインタビューしたいと思います!……』


画面の中のあいつはいつも通りにっこりと笑っている。
お得意の、隙のない完璧な笑顔だ。
インタビュアーからの質問に対し、百点満点優等生の返答をしている。


けれど。


「なにやってんだよ。ほんっと馬鹿だな」


女子高生らしくない大人びた洋服で着飾って、いつも通りのような笑顔はただ張り付いているだけで、全然似合ってない。
普段のあいつを見ている奴が見れば、バレバレだ。


ーー右腕につけられた似合わないブレスレットが、手枷のように見えてなんだか気分が悪くなった。



*****



「昨日は無断で部活休んでしまって、すみませんでした」


長い黒髪を揺らし、ぺこりと頭を下げる姿に苛立ちが募る。


「お前馬鹿だとは思ってたけどほんっと馬鹿だな。宇宙一の馬鹿だな」

「開口一番、相変わらずひどいですね先輩」

「大体、行きたくもないのに行くんじゃねぇよ」

「しょうがないじゃないですかぁ。っていうか何で行きたくないって分かるんですか」

「あんな不細工な顔してたらバレバレだっつの」


いつもの軽口。たった1日交わさなかったらだけなのにやけに久しぶりな気がする。

莉穂はいつもみたいに、ひどいと言って笑っていた。

けれど。


「だから馬鹿って言ってんだよ」


頭にぽんっと軽く手を乗せると、その瞳から一筋涙が零れ落ちた。


「ほんっとバレバレ。泣くほど嫌なもんを我慢すんな。そもそもお前にはあんな飾り物扱いは似合わねぇんだよ」


潤んだ瞳が驚いたように見開かれ、再び雫が溢れる。


「……っ、ううっ…だからっ、何で分かるんですかぁ…」

「はいはい。単細胞のお前のことなんかお見通しですよ」


いつもは年下とは思えないほど余裕があって強かに俺をからかってくる癖に、辛いときは無理をして明るく振舞おうとするところとか、全然人に頼ろうとしないところとか。

泣いている莉穂の頭をぺしぺしと叩きながら、思う。

画面の中のお人形みたいな姿じゃなく、泣き顔でも生き生きとしているこっちの方がいい。

そんな感情を、

なんと呼ぶかはまだ考えたくない―――。