私が "彼" に出会ったのは中学校2年生の時だった。


父親に連れて来られた、コンクールの優秀作品展示会。
自分の作品を何の感慨もなく眺めた後、ふらりと他の作品を見学していた。

そして高校生の部の作品を見た瞬間、衝撃が貫いた。
目に飛び込んできたのは、幼い少女と向日葵の絵。
少女が少し背伸びをして、自分より背の高い向日葵に手を伸ばし楽しそうに笑っている。

特別複雑な技巧を凝らしているわけでもない、シンプルな構図の絵。
しかし、それは今にも動き出しそうなほど生命力に満ちていた。

少女の楽しさや嬉しさという感情、そして幼さゆえの破天荒さや自由までもが伝わってくるようだった。


この少女が羨ましいと思った。


その人の魅力を最大限に引き出し、感情すら絵に閉じ込める。こんな画家に描かれたらどんなに幸せだろう。

自分も、画家である父親のモデルになったことが何度かあるが
毎回決められたポーズに応えるだけでそこに私の意思はなく、既に完成された絵の一部としての役割を果たすだけだった。言うなれば、私以外の誰がモデルでもきっと同じだけの価値を持つ絵になるだろう。

だからこそ、こんなにも人の感情が主役になっている絵を描けるその才能に強烈に惹きつけられた。


いつか、自分もこの人に描いてもらいたい。


最優秀作品
「成長」
旭高等学校1年 佐藤 海里


絵の下に掲げられたそのプレートを目に焼き付け、私は進学先を決めたーーー。