食べ終えた航君が

「………分かりました!もうこれ以上……聞きません。
でも…辛くなったら……愚痴って下さいね。
後…別れるにしても……
一度、森先生と話してあげて……下さいね!
あの人……先生のことが大好きだから。理由も分からず別れたら……
悩み過ぎて……ハゲちゃいますよ!!見たくないでしょう??」

そう言って笑うと

唯の食べ終えた食器に、目を落として微笑んだ。

いっぱい心配かけてるなぁ。

レジで支払いを済ませた航君に

「ありがとう。」ってお金を渡そうとしたら

「実は……今日の二人分のお金……。森先生にもらってるんです。
俺……唯先生に夕ごはんを食べさせるアルバイトをしてたんで………。
返すなら、直接本人に渡して下さいね!!」って

イタズラっ子のような顔で笑った。

……………先生。

「遅いから、送って行きます。」

反対だから……一人で帰るって言っても

「ここまでが、アルバイトなので!」って譲ってくれない。

「先生、森先生って……すげぇ~器の大きい人なんですよ。
唯先生に好意をもってた俺にこんな事頼むなんて………
普通は……出来ないですよ。
だって……弱ってる時って…俺にチャンスがあるでしょう?
でもね……それが分かってて……
自分が動いたら……先生が辛くなる。
四人にも距離を置いて……頼ってないからって……
俺に「嫌な役をさせて……ごめん。」って…頭を下げたんですよ。
先生には悪いですけど!
俺、森先生に惚れちゃいそうですよ!!」

そう言ってからかう航君も……先生に負けないくらい優しいね……。

「先生、四人の先生達と……喧嘩しちゃいましたか?
…………って…ごめんなさい。
先生が心配で……ついいらない事まで……話しちゃいますね。」

「ありがとう。ごめんね。………でも、大丈夫だから。」

「先生、知ってます?幼稚園のあるある話。
唯先生の『大丈夫』は、信じてはいけない!って…あるんですよ。
むしろ、先生が『大丈夫』って言ってる時は……危険だ!って。
あっ!そう言えば……
もしも辛くなって…でも……誰にも言えない時は……
土に穴を掘って叫んで埋めるか……海に行って叫んで下さいね!
とにかく!自分にだけは、ウソをつかないで……素直な言葉を吐いて下さいね。
………ってこれも森先生からのアドバイスです。
いくらなんでも、俺が『海で叫べ』なんてオジサンの発想……
しないですよね??直ぐバレるって~。
でも…あの人……。
どれだけ唯先生のこと………分かってるんですかねぇ~。」

そう言ってニッコリ笑うと

「着きましたよ!
『無事に送り届けました。』ってメールしておきますね。
先生は、なんにも考えないで…寝ちゃって下さい。
では、おやすみなさい。」

「ありがとう」以外の言葉がみつからない。

先生も航君も………どれだけ唯に甘いんだろう。

……ううん。

本当は、四人だって園長先生や主任先生だって………

悲しい思いをした咲ちゃんだって……。

声には出さないけど……心配そうに見守って……くれていた。

プライベートを持ち込んで……最低なことをしてるのに………