泣き笑いを浮かべたら

「食べましょう!」って、フォークを動かしながら

「先生、別れたら……ダメですよ。
咲のことは俺か先生が話してみるから……ねっ!
抱え込まないで下さい。」

「ダメ……咲ちゃんには……何も言わないで………。」

「でも………」

「本当に……。
咲ちゃんは…本当に先生を好きになっただけなの。
私は…たまたま先生とお付き合いが出来たけど…もし立場が逆だったら…
今、泣いてるのは……私なの。
私の運が良かっただけで……。
だから……咲ちゃんをこれ以上傷つけないで……欲しいの。」

それに……

もしもこれ以上追い討ちをかけて……感情的になったら…

彩ちゃんの気持ちを……言っちゃうかもしれない。

彩ちゃんは先生に告白しないって言ってたのに……

咲ちゃんが言ったりしたら……みんなが傷ついちゃう。

だから……

もう、咲ちゃんを刺激しないで………って思うの。

「先生は…森先生と。
本当に……別れちゃうつもりですか?」

「……………うん。」

「本当に??
あんなに……先生のことを思ってくれる人と??」

「……………………………。」

「森先生より……咲が大切ですか?!
先生にとって、森先生って……それくらいの人だったんですか??
俺………
先生達が…本物だって思ったから……引いたんです。
咲と比べて、後輩を取るくらいなら……
俺でも……いいですよね??
先生でも…俺でも…大して代わらないでしょう?」

いつになく……怒ってる。

そうだよね。

言わないでいると……航君も……傷つけちゃうんだよね。

「あのね。
本当は…咲ちゃんのことは……関係ないの。
もちろん、きっかけはそうだけど……。
今は……別の事情で……別れないと…いけないの。
咲ちゃんに言われた時は……悩んだけど…別れようって思わなかった。
でも…今は。
別れたくないけど………別れたいの。」

「…………別れないと…いけないことなんですか?」

「うん」

「…………………………」

「…………………………」

どちらもそれ以上言葉が紡げず……無言で食事を進めたの。