その代わり…………

「唯先生!おはようございます。」

屈託のない笑顔を向けてくれる航君。

…………この人も騙してたのに……

「はい、これ。」

差し出されたのは……チョコレート。

「朝メシ抜いたでしょう!
それ以上痩せちゃったら……魅力無くなっちゃいますよ。」

泣いた顔がバレバレなのに、触れないでいてくれる。

「園長先生が来る前に……食べちゃって下さいね!」

頭の上にポンと乗せて…去って行った。

…………………ありがとう。



今日して欲しい事をメモに書いてから、咲ちゃんの机の上に置いた。

自分も、明後日からの準備に取りかかる。

私は……先生。頑張らないと!

9月の出席簿を作るため……事務室に子供の印鑑を取りに行く。

「唯先生……ちょっといい?」

先生に声をかけられた。

事務室に来たら、先生が居るのは当たり前なのに……

どこかでまだ……期待してる……甘い自分がいる。

………先生だ。

朝から数時間しかたってないのに…ずいぶん時間が過ぎた気がする。

「……………はい。」

逃げることなんて出来ないのに……時間を稼ぎたくなる。

何の話しかな?

泣きたくないのになぁ~

事務室からの廊下を、時間をかけて歩いていたら

部屋の前には、先に向かった先生が壁にもたれて立っていた。

こんな状況なのに

カッコいいなぁ~って……思う自分に笑ってしまう。