なんの声もしない電話が、もう相手が
そこにいないことを告げているのに、
ずっと握りしめたまま、座っていた。


…あたし、何やってるんだろ。

頭の中を整理しようにも、色んな思いが
消えては浮かび…何も結論が出ない。
考えてるようで、考えてない…。
そんな状態を続けていた時、
また電話が鳴った。


見ると、知らない番号が表示されてる。

…あ。もしかして。
出てみると、

千恵さん?佐久間ですけど。
大丈夫ですか?


大丈夫…なのかな。
よくわからないです…。


話できたんですか?あの方と。


はい…さっき。
ヒカルには、後で電話して説明するって
言ってました。
それで終わりだろうって。


そうですか…。
それで、千恵さんはどうしたいんですか?


え?


その方との、今後です。
今までどおり?
それとも…試しに僕と付き合ってみますか?




佐久間さん…本気で言ってます?

あたし、コウキのこと、自分でも
よくわからないんです。
コウキと結婚なんてできないと…
思ってたのは本当です。
だから、ヒカルの誘いにのってパーティにも
行きました。
ヒカルのためではあったけど…
そういうのも、いいかなって思ってたんです。

…だから…コウキには言わなかった。



それなのに…こんなにも取り乱して。

あたし…ずるい。