「君は神様って信じるかい?」
俺の顔を覗き込んだ男は、開口一番、そんな言葉を投げかけてきた。
「かみ、さま?……なに、それ。」
ぼんやりとした頭では、なんのことだかさっぱりだ。しかし、男は俺の言葉の何を気に入ったのか、実に嬉しそうに口角を釣り上げた。
「うん、うん。気に入ったよ。ねえ君名前は?」
「……なまえ?」
聞かれて、初めて気がついた。
「なにも、わか、らない。」
俺は何で、ここはどこで、なぜここに居るのか。何もかも、わからない。覚えていないことに。
「そうかい。なら、ぼくの所に来るといい。……彼女の真似をするなら、そうだね。」
少し間をおいて、ゆっくりと男はこう言った。
「君は今日からぼくらの家族だ。」