“幸せ”だって無くして気がついた 馬鹿な僕だから



「突然お邪魔してすみません。
たまたま近くを通ったものですから。」


早苗さんが仏壇からテーブルに移動したので俺もそれに合わせる。



湯気が立つ緑茶を一口飲むと、
父親が口を開いた。


「昨日はエリコの誕生日でした。
生きていたら今年で35歳。

いい人を見つけて結婚していたのか、もう私に孫を抱かせてくれていたのか・・・。」


「エリコさんはきっと良いお母さんになっていたんでしょうね・・・。」


「・・・・・・私もそう思います・・。

あの子には母親の愛情を与えてあげられなかったけど・・

その分強くて優しい子に育ってくれましたから・・。」