その手から伝わる温もりに安心感を覚え、冷房のきいた店の中冷え切った身体と心に染み渡った。


「とにかくさ、陽亮君ともう少し一緒にいる時間を増やしていって、それからアズサも自分と向き合えばいいよ」


私はサクラに二度頷き、サクラの言う通りもう少し時間をかけてゆっくり考えてみようと思った。



夏の日が射す時間は長いのにも関わらずもう窓から差し込む光は赤くなっており、あんなに込み合っていた店内も空いている席が目立つようになってきた。


陽亮への気持ちの答えは出なかったけれど、みんなに話した事で予想通り心は軽くなっていた。



「じゃあ、次は学校で会おうね‼」


もやもやした霧は晴れ切ってはいないけれど、今日みんなの顔を久々に見れた事で笑顔が意識しないでも顔に浮かんでいる事を感じて、別れの挨拶だというのに元気よく言える事が嬉しくさえ思う。


見えなくなるまで大きく手を振るカエデにも話を聞いてくれた感謝からか『バカだな~』とは思わないで、道行く人が見ているのに私も大きく手を振り返す。


夏休みが終わったら、もう少し陽亮を真剣に見てみよう。

心の中で何度も誓い、恋という未知なる領域に足を踏み出す二学期が夏休みが終わる悲しさより楽しみが上回ってきた。