ツバキとサクラは口に手を当て私と同じく驚いた顔をしているし、カエデに至っては面白がるようにニヤニヤして口元が明らかに緩んでいる。

サクラまで見終わった後、もう一度口を開けたまま陽亮を見た。


「そーゆー事だからよろしくね、アズ」


席に座りながら、私にだけ聞こえる小さな声で囁く。


よろしくと言われても、私にどないしろっちゅーねん‼
パニックの為か、関西人でもないのに関西弁でツッコミを入れてしまう。


徳山先生も、教師経験で初の事だろう。
ショックなのか戸惑っているのか、はたまた本心なのかよくわからないけれど ……


「うん、まぁその……頑張れよ?」


たったこれだけで騒がしい教室を静めるのを諦め、疑問形で一学期最後の言葉を締め括り教室から出て行ってしまった。


教室中の熱気冷めやらぬ中、私はどこを見ればいいのかがわからなかったけれどとりあえず前だけは見れない。

アカリの放つ殺気をビシバシ肌に感じていますからっ。





拝啓
父上様、母上様。
お元気ですか?

アズサは今日この日に初めて学校を辞めたいと思いました。



現実逃避もそこそこに、鞄をすでに持ったサクラたちに力の抜け切った体を引きずられる様に徳山先生に続き教室を後にした。


去り際にアカリの舌打ちと、陽亮の投げキッスの音を聞いたような気がするけれど。気絶しそうな私には、どちらも幻であって欲しいとしか願えなかった。