僕は今日、高校生になる。
県内1の進学校で、入試もすごい難しかった…
自分でも合格出来たのが奇跡だと思っている。


(…あ)


同じクラスで、出席番号が僕の次の女子、塾が同じだったなぁ

…あいつも受かったんだ。

まぁ、あたりまえか。
彼女、いつもテスト上位だったし。
模擬入試も合格してたし。


いつもテストで平均下で模擬入試も不合格だった
僕とは違うんだ。オドオドしながら教室に入る。

「おはようございます…」


皆真剣な顔をして入学式のしおりを見ている。

うわ…睨まれた…


とりあえず席を確認して
自分の席に座った。


誰一人談笑してない。
他のクラスではもう自己紹介とかし始めているのに、
このクラスはこれから大丈夫なんだろうか。


「ねぇ…あなた、同じ塾だったわよね?」
前の席の女子…仲野莉世だ。僕のこと…覚えててくれたんだ…。
僕は塾ではいつも1人で、影も薄いから知らないと思ってた。

それに比べて彼女はいつも小テスト満点だし、成績優秀者のランキングにも載っていた。
僕の塾ではちょっとした有名人だ。


そんな彼女が、僕を覚えててくれたことは正直意外だった。


「ちょっとあなた?聴いてる?」

「あ、あぁごめんなさい、聴いてます」


明らかにコミュ障丸出しの答え方しちゃった。

「それで、同じ塾だったわよね?」
「え、あ、はい」
「よかった、人違いかと思ったじゃない」

仲野さんってこんな話し方なんだ…
そういえば、お家はお医者さんだっけ…両親二人とも。

会社員の父とパート勤めの母、それから2人の妹がいる庶民中の庶民である僕とは住む世界が違うのかもなぁ…

「なんか、堅苦しいし敬語やめよう?同じクラスなんだし」
「はい…あ、うん」

「私、仲野莉世。よろしくね」
「僕は夏野彰人。僕キミのこと知ってる。仲野さん有名だから」

というか、クラスで僕たちしか喋ってないから僕たちの声が教室中に響いててちょっと恥ずかしいなぁ…

皆が僕らに注目してる。
皆も僕たちみたいに自己紹介して友達になればいいのに。

進学校だから友達とかいなくてもいいって思ってるのかな…?

「彰人くんは…」

ガララっ
「えー皆さん入学おめでとう。えー今から入学式ですので出席番号順に並んでください」


何かを言いかけた仲野さんを遮るように先生が教室に入ってくる。

担任だろう。なんだか気だるげな人だ。
僕らの緊張を和らげるつもりで言っているだけかも知れないけど。



出席番号は、仲野さんの次が僕だ。
だから2列で並ぶと隣同士になる。

でも全く知らない人じゃなくてさっき自己紹介をしたし同じ塾だった仲野さんで良かった…

「彰人くん、これからよろしくね」