登校していると上級生に「娘ちゃんおはよ~!」と次々に挨拶されていく。
綾音は返すのに精一杯だった。
こりゃ大変だ…
朝から憂鬱になりそうだ。
「でもそれって綾音のお父さんが人気者ってことじゃない」
友だちの玲奈に言われて、まぁ、確かに…とは思った。
嫌われているよりはいいか。と思うことにした。
中学校は小学校からの繰り上がりなので知った顔がたくさんいる。
半分は隣の小学校の生徒なので半分は知らない人だ。
玲奈は綾音に髪の毛を伸ばしたら?と言ってくる1人だ。
母を見たときからずっと言われている。そうしたらモテるのに。と…
でも綾音にはあんまり興味がなかった。
綾音の理想は父で父を超える人物に会ったことがなかったから。
「ねぇ、部活どうする?」
玲奈が聞いてきた。
小学生の時は父の影響でテニス部だったのだが今の状況で父の顧問のテニス部に入っていいものなのか…?
「んー考え中」
とだけ答えた。
「そうなんだ、テニス部かと思ってた」
「お父さんに聞いてみないとわかんない」
「顧問だっけ?」
「うん」
「私はテニスだなー」
玲奈も小学校の時にテニス部だったのだ。
玲奈は知っていた。実は綾音に思いを寄せている男子が結構いることを。
綾音は少しファザコンなところがあるせいか好きな男の子の話を聞いたことがない。
「もったいない…」
声に出てしまった。
「何が?」
不思議そうな綾音に、ううん、なんでもない。とだけ答えた。
「テニス部?いいんじゃないか?」
父の答えに驚く。
「いいの?」
「せっかくやって来てるんだし、やめるの勿体ないだろ?でも俺は容赦しないぜ?」
不敵に父が微笑んだ。
綾音はこんな父が大好きだ。
「うん!」
…またこの教室だ…
綾音はこれが夢だとわかっていた。
「席につけー」
そう言って入ってきたのは男の先生。
綾音は自然に席についた。
よくみるとそれは父だった。
でもいやに若い。どう見ても20代だ。
…おかしい…なんなの?これ…
「平沢ーいないのか?」
父の声をぼーっと聞いていると横をつつかれる。
「かをり!呼んでるよ!」
反射的に、はい!と答えた。
どうやら私は平沢かをりというらしい。
おかしい…夢にしてはおかしくない?
父は若いし、私は別人になっていて父も気付いてくれない。
「お父さん!」
綾音は不安になって叫んだ。
すると教室がどっと笑いに包まれる。
父は赤くなって答えた。
「お前…俺にはこんなでかい子供はいねーよ」
「裕ちゃん先生まずお嫁さん探さないとー!」
「うるさいよ!」
教室は笑いでいっぱいになった。
父はやっぱり私のこと分かってない…
母はどこにいるのだろう?学校だからいないのかな。家にいるんだろうか?
綾音は不安になった。
授業は2年生のなんてわかるはずないのにすらすらとテストの答えを書けた。
こんなこと習ってないし、しらないはずなのにペンが進む。
とりあえず授業を受けて、家に駆けた。
お母さんはどうしているのだろう?お母さんも若くなってるの?
でもお嫁さん探す所からって言っていた。
綾音には分からなかったがとりあえず家に向かったが家について茫然とした。
そこは更地だった。
「家がない…」
綾音は途方に暮れてしまった。
すると
「平沢?」
若い父の声で振り向くとそこには父が立っていた。
「何してんだ?こんな空地でぼーっとして。早く帰れよ~」
綾音は思わず胸に飛び込んだ。
「お父さん!」
その言葉に父はまた真っ赤になって笑った。
「お前…さっきからお父さんって…俺をなんだと思ってんだよ」
綾音を引きはがす。
「でも…」
「お前熱でもあるのか?早く帰った方がいいぞ」
あ、と思い出したように胸のポケットから手紙を出した。
「こういうのは同級生に渡しなさい」
そう言って父は去っていった。
それには【裕ちゃん先生へのラブレター】と書かれていた。
少々驚いて中を開けた。
そこには父に向けて愛の言葉が書かれていた。
「なにこれ…」
早く目覚めなければ。おかしくなってしまいそうだ。
自分はなんなのか?昨日の夢の続きにしてもなんだかリアルすぎる。
「…気持ち悪い…」
そう呟いたところで目が覚めた。
朝の鳥のさえずりすらも気持ち悪かった。
なんだかおかしい。漠然とした不安が胸に広がっていった。
リビングに降りていくといつもの風景が広がっていた。
「あら、おはよう、綾音。早いのね」
朝食の用意をしながら母が微笑んだ。綾音は力が抜けてしまってその場にへたりこんだ。
慌てて母が飛んでくる。
「どうしたの?綾音!」
「お母さん…」
綾音は涙を浮かべた。
「ここは私の家だよね…?お母さんは私のお母さんよね?」
「綾音、どうしたの?当たり前じゃない」
そこへ父がやって来た。
「どうした!?綾音!」
慌てて駆け寄る。
お父さん…いつものお父さんだ…若くないお父さん。
「お父さん…」
綾音は父の胸で泣き始めた。
両親は顔を見合わせた。
ゆっくりと綾音を立たせてソファに座らせる。
「大丈夫か?」
父の問いかけが嬉しかった。夢ではどこか突き放した感じがしたから。
綾音は夢の話をした。
両親は黙って聞いていたが顔面蒼白なのはすぐにわかった。
「ねぇ、何か知っているの?この夢はなんなの?かをりって誰?」
泣きながら綾音は訴えた。
綾音は返すのに精一杯だった。
こりゃ大変だ…
朝から憂鬱になりそうだ。
「でもそれって綾音のお父さんが人気者ってことじゃない」
友だちの玲奈に言われて、まぁ、確かに…とは思った。
嫌われているよりはいいか。と思うことにした。
中学校は小学校からの繰り上がりなので知った顔がたくさんいる。
半分は隣の小学校の生徒なので半分は知らない人だ。
玲奈は綾音に髪の毛を伸ばしたら?と言ってくる1人だ。
母を見たときからずっと言われている。そうしたらモテるのに。と…
でも綾音にはあんまり興味がなかった。
綾音の理想は父で父を超える人物に会ったことがなかったから。
「ねぇ、部活どうする?」
玲奈が聞いてきた。
小学生の時は父の影響でテニス部だったのだが今の状況で父の顧問のテニス部に入っていいものなのか…?
「んー考え中」
とだけ答えた。
「そうなんだ、テニス部かと思ってた」
「お父さんに聞いてみないとわかんない」
「顧問だっけ?」
「うん」
「私はテニスだなー」
玲奈も小学校の時にテニス部だったのだ。
玲奈は知っていた。実は綾音に思いを寄せている男子が結構いることを。
綾音は少しファザコンなところがあるせいか好きな男の子の話を聞いたことがない。
「もったいない…」
声に出てしまった。
「何が?」
不思議そうな綾音に、ううん、なんでもない。とだけ答えた。
「テニス部?いいんじゃないか?」
父の答えに驚く。
「いいの?」
「せっかくやって来てるんだし、やめるの勿体ないだろ?でも俺は容赦しないぜ?」
不敵に父が微笑んだ。
綾音はこんな父が大好きだ。
「うん!」
…またこの教室だ…
綾音はこれが夢だとわかっていた。
「席につけー」
そう言って入ってきたのは男の先生。
綾音は自然に席についた。
よくみるとそれは父だった。
でもいやに若い。どう見ても20代だ。
…おかしい…なんなの?これ…
「平沢ーいないのか?」
父の声をぼーっと聞いていると横をつつかれる。
「かをり!呼んでるよ!」
反射的に、はい!と答えた。
どうやら私は平沢かをりというらしい。
おかしい…夢にしてはおかしくない?
父は若いし、私は別人になっていて父も気付いてくれない。
「お父さん!」
綾音は不安になって叫んだ。
すると教室がどっと笑いに包まれる。
父は赤くなって答えた。
「お前…俺にはこんなでかい子供はいねーよ」
「裕ちゃん先生まずお嫁さん探さないとー!」
「うるさいよ!」
教室は笑いでいっぱいになった。
父はやっぱり私のこと分かってない…
母はどこにいるのだろう?学校だからいないのかな。家にいるんだろうか?
綾音は不安になった。
授業は2年生のなんてわかるはずないのにすらすらとテストの答えを書けた。
こんなこと習ってないし、しらないはずなのにペンが進む。
とりあえず授業を受けて、家に駆けた。
お母さんはどうしているのだろう?お母さんも若くなってるの?
でもお嫁さん探す所からって言っていた。
綾音には分からなかったがとりあえず家に向かったが家について茫然とした。
そこは更地だった。
「家がない…」
綾音は途方に暮れてしまった。
すると
「平沢?」
若い父の声で振り向くとそこには父が立っていた。
「何してんだ?こんな空地でぼーっとして。早く帰れよ~」
綾音は思わず胸に飛び込んだ。
「お父さん!」
その言葉に父はまた真っ赤になって笑った。
「お前…さっきからお父さんって…俺をなんだと思ってんだよ」
綾音を引きはがす。
「でも…」
「お前熱でもあるのか?早く帰った方がいいぞ」
あ、と思い出したように胸のポケットから手紙を出した。
「こういうのは同級生に渡しなさい」
そう言って父は去っていった。
それには【裕ちゃん先生へのラブレター】と書かれていた。
少々驚いて中を開けた。
そこには父に向けて愛の言葉が書かれていた。
「なにこれ…」
早く目覚めなければ。おかしくなってしまいそうだ。
自分はなんなのか?昨日の夢の続きにしてもなんだかリアルすぎる。
「…気持ち悪い…」
そう呟いたところで目が覚めた。
朝の鳥のさえずりすらも気持ち悪かった。
なんだかおかしい。漠然とした不安が胸に広がっていった。
リビングに降りていくといつもの風景が広がっていた。
「あら、おはよう、綾音。早いのね」
朝食の用意をしながら母が微笑んだ。綾音は力が抜けてしまってその場にへたりこんだ。
慌てて母が飛んでくる。
「どうしたの?綾音!」
「お母さん…」
綾音は涙を浮かべた。
「ここは私の家だよね…?お母さんは私のお母さんよね?」
「綾音、どうしたの?当たり前じゃない」
そこへ父がやって来た。
「どうした!?綾音!」
慌てて駆け寄る。
お父さん…いつものお父さんだ…若くないお父さん。
「お父さん…」
綾音は父の胸で泣き始めた。
両親は顔を見合わせた。
ゆっくりと綾音を立たせてソファに座らせる。
「大丈夫か?」
父の問いかけが嬉しかった。夢ではどこか突き放した感じがしたから。
綾音は夢の話をした。
両親は黙って聞いていたが顔面蒼白なのはすぐにわかった。
「ねぇ、何か知っているの?この夢はなんなの?かをりって誰?」
泣きながら綾音は訴えた。