『佐倉さん』

休み時間。

次の授業の準備をしていた私の前に、一人の女子が立ち止まった。

多分、私に用があるんだろうな。

一体どうしたんだろ?

『あのさ、#$+%*&@……』

うー……。

やっぱ難しいな。

私、読心術でも身につけといた方がいいのかもしれない。


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_相手が何を伝えたいのか。
何を、言っているのか。
それを、今の私が理解すること。
それほど難しいことなど他にない。
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その女子はクラスメートの子で、席もそこそこ近い。 

だから顔は知ってるけど…私は、何もしてあげられない。

見るからして、彼女は困った顔をしてる。

何か、頼みごとなのかな。

でも……ごめんなさい。

私は無力だから…。

そう思って彼女から目をそらす。

すると彼女は残念そうな顔を浮かべてどこかへ去っていった。

本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

もう、こんなことの繰り返しばかりだ。

いつもいつも、同じ対応しか出来なくて。

誰かの力になれなくて。

それが、苦痛でしか、なかった。








私は






声なんて聞こえないし



声なんて出せないの