東京タワーがとても間近に見えるこのレストランは、個室は実はこの部屋しかないらしい。
三ツ星レストランでいつも満席のはずなのに、トオルさんの急な予約にも必ずこの個室は空室で私達を迎えてくれた。
それはトオルさんがこの店にとって特別なお客様だから。
その証拠に必ず店のオーナーが笑顔で挨拶に来た。
でも、気の毒な事に、今日のオーナーが挨拶に来たタイミングは最悪な時間帯だった。
私の突然の告白に言葉を失っているトオルさんの元へ、オーナーは満面の笑みを浮かべてやって来た。
「中山様、今日もこのお店をご贔屓にいて頂き、本当にありがとうございます。
今日はスペシャルディナーを用意しておりますので、この後に…」
流暢に喋っているオーナーを、トオルさんは無慈悲にも手で制した。
話すのを止めて、さっさと出て行けと…
私はこの時初めて私モードでないトオルさんの裏の顔を見た。
いや、裏の顔ではない、きっと、仕事モードの冷徹な顔…
甘々のデレデレのトオルさんの顔しか知らない私は、このギャップにちょっとだけ不謹慎だけど胸がキュンとした。



