加恋のお腹は思ったより大きくない。
洋服によっては、妊婦には見えなかった。

でも、確実に健康に、赤ちゃんは成長しているらしい。
ここ最近、仕事が忙しかったため病院に付き添って行っていない俺は、加恋のお腹を撫でる事でその成長を見守っていた。


「あ、ほら、また動いたよ」


最近の赤ちゃんはとにかくよく動く。
加恋はその度に、最強に優しい笑みを浮かべて、そのお腹を愛おしそうに撫でた。

俺はそんなお腹の中に住んでいる赤ちゃんに、いつも嫉妬する。
そして、隠しきれないこの感情は、もう加恋にバレバレだった。

そんな風にお腹を撫でる加恋に俺はいつも膝枕をしてもらう。
赤ちゃんのいるお腹を撫でるように、俺の頭も優しく撫でてもらいたかったから。

そして、大きく飛び出たお腹に向かって、俺はいつもこう話しかけた。


「ママのお腹の中はどうですか?

俺がどうやっても届かないママの世界の景色はどうですか?

ママと血が繋がって出てくるなんて、本当に最高だよ、君は。

君が外に出てきたら、ママのお腹の中の世界を、俺にたくさん教えてくれよ。

きっと、美しい世界なんだろうな…
羨ましくて、涙が出てくるよ…」


その度に加恋は笑う…
トオルさん、もうすぐパパになるんだよって、笑いながら。