「中山さん、中へどうぞ」


予約制のこの病院の待合室には、俺と加恋しかいない。
というか、俺がそうしてもらった。

もし妊娠じゃなかった場合を考えると、加恋のショックは相当なはずだろう。
もうその気でいるし、妊娠をすごく喜んでいたから。

だから、加恋の診察の前後の一時間の時間を俺はお金で買い取った。
最低な成金野郎と思われても、そんなのどうでもいい。

診察の後の時間を大切にしたいから…
良くても悪くても、俺は加恋を抱きしめる。

そんな時間を誰にも邪魔されたくなかった。


加恋が診察室に入ってからすぐに俺も呼ばれた。

加恋の担当になった女医の先生は、笑顔が優しい素敵な女性だった。


「おめでとうございます。
妊娠が確認されました。

お父さんもお腹の様子を見てみます?」


お腹の様子??

ベッドに横になっている加恋が照れくさそうに笑った。
その顔を見れただけで、俺はもう満足なのに…

加恋のお腹を映すエコーは3Dタイプなのか、全てがグロテスクに見える。


「ほら、ここです。
この丸いものが赤ちゃんです」