「わお、加恋ちゃん!
それ以上に綺麗になって、俺の息の根を止める気だな。
喜んで受けようじゃないか。
加恋ちゃんの魅力に負けて死んでしまうのなら、俺の本望だ」
待ち合わせ場所で私を見つけると、トオルさんは一気に私モードに入った。
私モードとは、職場で見せるトオルさんとは全く別の人格らしい。
私は、職場モードのトオルさんはあまり知らないけれど…
「トオルさん、驚かないで、怒らないで、私の告白を聞いてほしい…
あ、まず、先に謝っておくね…
ごめんなさい…」
レストランに入り、食事が出てくる前に私はいきなりこう告げた。
トオルさんの涼し気な顔が、一瞬でこわばるのが分かった。
「え…
ちょっと待って…
告白を受ける前に聞いていい?
別れたいとか…?」
そうだと思った。
この世が終末を迎えたようなどん底の顔は、きっと別れを切り出されると思った顔。
「全然、そんなんじゃないよ!
別れるなんて、絶対ないから安心して。
そんなのに比べたら、全然大した事ないよ」
トオルさんの口元がほころび出した。
あ~、良かったみたいな、ホッとした顔に変わる。
「実は… 私…
モデルの仕事を辞めてなくて、なんと、すごい仕事のチャンスをもらった。
トオルさん、私、ニューヨークへ行く!」



