すると、トオルさんはドレッサーに座る私を抱き上げ、同じ部屋にあるベッドへ連れて行く。

まずはトオルさんがベッドに座り、そして、私を自分の膝に座らせ包み込むように抱きしめる。


「いいの…
俺が送りたいんだから、送らせてよ」


トオルさんはこんな時、高校生の男の子みたいになる。
自信がなさげで、寂し気で、可愛らしくて。


「でも、会社に間に合わなくなっちゃうよ…」


私はそんなトオルさんをいつも抱きしめる。
10歳の年の差なんて、まるでないみたいに。


「朝早く、会社に顔を出してから、また家まで帰ってくるよ。

そして、加恋ちゃんを無事に送り届けてから、また会社へ向かう」


トオルさんはまだ甘えた風に私に抱かれている。


「もう、そんな無理しなくていいのに…」


私のお決まりの言葉だ。
そして、その言葉を聞いたトオルさんは、私のうなじに軽くキスをする。


「俺がそうしたいんだから、そうさせて。

俺は、加恋ちゃんの下僕になりたいってそう言ったろ?」


また始まった…
それまでは下僕っていう言葉すら知らなかったのに。


「下僕になるのは許しません!

だって、私は女王様とかにはなりたくないから」