「何か問題があったらまた連絡してほしい。
EOCの人間に僕達は会って話すだけで貴重な事なのに、あんな怖い顔であり得ないほどの条件を、いや、僕達にとっては有り難い条件なんだけどね…
簡単に涼しい顔で契約書にサインするんだから。

素晴らし過ぎて、逆に怖かった…
超一流の人間は何を考えてるのか、凡人の俺には理解不能だよ」


いえいえ、社長、理解容易です…
単純に私が好き過ぎて、壊れているだけですから…

私は社長室を出ると、大きなため息をついた。
トオルさんがどういう条件を出したのかすごく気になる。
でも、その前に、もう一つ大きな問題が立ちはだかってしまった。

それは町田さん…
この事務所お抱えの専属トレーナー。
モデル業界では有名な影の立役者。

実際、私も町田さんに鍛えられて、今の地位にいる。
何が問題かって…?
その町田さん、業界きってのイケメントレーナーで、私の結婚を唯一反対した人間だった。

私は社長室の前の廊下で、ブツブツ言いながら行ったり来たりしている。
町田さんは中途半端な人間が大嫌い。
それにジェイクハミルトンのショーのチャンスを掴みかけている私が、途中で下りるなんて何があっても許さなかった。