私は早口で、そのオーディションの最終審査に参加出来る事の貴重さを話した。

モデルをしている女子なら必ず憧れる、その舞台の素晴らしさと偉大さを。

トオルさんは頭を抱えたり、ため息をついたり、自分と必死に戦いながら辛抱強く私の話を聞いてくれた。


「それで、明後日までにちゃんとした返事がほしいって言われた。

事務所的には、私に同行する人間の確保とエアとホテルの手配を急ぎたいからって」


私の最後の言葉にトオルさんは、また大げさに頭を抱えた。


「よし、分かった…
明後日には俺もちゃんとした返事をする。
だから事務所には、俺の許可待ちだって伝えといて」


私は伏し目がちに下を向いてうんと答えた。
トオルさんはそんな私を強く抱きしめる。


「ねえ、俺達、ここに何しに来たんだ?
ご飯を食べに来たのに、もう30分以上も何も食べずにいるなんて、どうりでお腹が減るはずだよ」


トオルさんはそんな事をおどけながら私に言った後、内線電話で食事を持って来てと話している。

私はそんなトオルさんをぼんやりと見ていた。

トオルさんはきっと許してくれる…
だって、私の願いは全部叶えてくれるから…