二人掛けの丸い円卓のテーブルが、私とトオルさんの距離を遠ざける。
家に居たなら、トオルさんの膝に座ってそして胸の中に包まれながら、ごめんなさいが言えたのに…
「ごめんなさい…」
私は正面に座るトオルさんの顔を見ずにそう言った。
顔を見るのが怖いから…
だって、私の知ってるトオルさんの顔じゃない…
下を俯いていると、トオルさんは小さくため息をついた。
そして、席を立つ音がして、そのまま東京タワーの見える窓の方へ歩いて行く。
私は自分のしでかした事の重大さに今さらながら気付いた。
モデルの仕事を辞める事は、トオルさんから言われた唯一の条件だった。
逆に言えば、それだけしかなかったのに…
「トオルさん… ごめんなさい…」
トオルさんの溺愛過ぎる愛情は、私を信じてくれている証拠…
そんな事を考えると、次から次へ涙が溢れ出る。
「加恋ちゃん…
ほら、俺の隣に来てごらん…」
トオルさんは大きな窓の出っ張った窓枠にちょこんと腰かけて、私を呼んだ。
私がうじうじして動かないでいると、もう一度優しく私を呼ぶ。
「加恋ちゃん… ほら…」



