「……偽善者。
あんたはとことん偽善者ね。
私はあんたみたいな人間が嫌いなの。
私の何がわかるっていうの?」
私が少しきつい口調で言えば、彼は黙り込む。
大人しくなった。
私の言葉を否定できないのだろう。
これでようやくわかっただろう。
そう思って私は彼に背中を向け、車両を変えようとしたその時………
「わかるよ。」
いつもよりトーンを落とした声が、私の耳へと届いた。
思わず立ち止まってしまう。
初めて聞いた、いつもより低い声。
真剣さが伝わってくる。
ゆっくりと振り向くと、もう彼に笑顔はなかった。



