「私ね、嬉しかったんだよ。」
ふと、落ち着いた声で鈴香が話し出した。
嬉しかった……?
引退試合は初戦から私立の強豪校と当たったから負けたのに。
みんな泣いていたのを今でも覚えている。
私だって、あの時初めて高校のバスケで負けて悔しいと思った。
なのに鈴香は嬉しいって……?
鈴香は疑問に思う私の方に視線を向け、そして優しく笑った。
「優梨が初めて近くにいると思えた日だから。
あの時、バスケが始まる前に優梨泣いたでしょ?」
始まる前に、泣いた……。
うん、確かに私は始まる前に泣いてしまった。
だってあんなことがあって、泣かずにはいられなかったから。
「だから嬉しかったの。
普段感情を見せない優梨が感情を見せてくれて。
優梨にもきっと色々あるんだなって、理由はわからなかったけど思えた日だから。」
知らなかった。
鈴香がそう思っていたなんて。



