たとえ君がいなくなっても私は忘れない





「俺は今日、優梨と二人で帰りたかったんだけど。」



エスカレーターに乗りながら、私の二段上にいる彼がこちらを向いてそう言った。



まさかそんなことを言われるとは思っておらず、素直に驚いた。



「なんで?
どうせ今から一緒でしょ。」



「そうだけど俺は優梨と話したかったんだよ。」



……会ってまだ間もないのによくそんなこと言えるな。



「だったら今話せば?
なんの話がしたいの?」



私はなるべく彼と話したくないというのに、もう逃げ場がないから仕方ない。



「そんなこと言われたって、別に話したい具体的な内容なんてないぞ?」



「………は?」



一瞬、何を言ってるのかわからなくて理解が遅れた。