「アパートってことは、一人暮らし?」
私の家の前に来て、口を開いたのは颯汰。
「そうだよ……」
「そっか。もう大学生だしな、優梨家事できそうだし。」
「それなりには……」
颯汰は私の隣から動かない。
多分私が家に入るのを待ってる。
鍵を手に取り、私は鍵穴に差し込んだ。
そして回す。
ガチャリと音が鳴り、ドアを開ける。
少し開いたドア。
だけどすぐ入る気にはなれず颯汰を見た。
颯汰はそんな私を見て笑っていた。
不自然な笑顔。
「優梨が入らないと、俺心配で帰れない。」
颯汰は家に入るよう促す。
だけど、足が動かない。
この瞬間も、今日あったことも
明日になれば全部夢だと思って儚く消えてしまいそうで……
やっぱり動けない。
首を横に振る。
少し涙で視界が滲み、颯汰を見上げると
颯汰も苦しそうな、悲しい顔をした。
こんな別れ方、一番嫌なのに。
「そっか。
じゃあ、俺が帰るな。
今日は本当にありがとう。」
颯汰は無理矢理笑顔を作る。
嫌だ、颯汰。
行かないで……。
迷惑をかけるってわかってるけど
最後にわがまま言わせてください。
「颯汰………!!
まだ、帰ってほしくない……」
私がそう言うと、颯汰の動きが止まった。



