「私は颯汰の行きたいところでいいよ。」
『それ、普通男が女に言う言葉だろ。
俺に言わせろよな。』
「そんなことないでしょ。
それに颯汰が静かに過ごしたいって言うから。」
『まあそうなんだけど。
静かな場所ってどこがある?
レストランとか?』
「え?そういう静かな場所?」
『じゃあ他にどこある?』
「んー、水族館?」
『あ、そういう所のこと言ってるのか。』
どうやら二人とも話が噛み合っていなかったようだ。
思わず笑ってしまう。
『……あ、待ってそろそろ時間やばいかも。
また後で連絡するな。』
「あ、うん……わかった。」
そっか。
さっき電話切らないといけないって言ってたよね。
明日も会えるとわかってるのに、なんだか寂しい。
久しぶりに颯汰の声が聞けて嬉しいかったから。
颯汰と話せて嬉しかったんだ。
『そんな電話越しでもわかるくらい寂しい声出すなよ。明日会えるから、な?』
どうやらそんな私が颯汰に伝わってしまったようで。
ダメだ……迷惑をかけてしまうから。
「うん、そうだよね。
じゃあ連絡待ってるから!」
最後はわざと明るい声を出して、私から電話を切る。
画面を見つめると、“颯汰”の文字があり不思議な気分になる。
何年振りに颯汰と話したっていうのに、全然気まずさとかなくて普通に話せてた。
明日、会えるんだ。
颯汰と会える。
嬉しいはずなのに、まだ明日が来てほしくないなんて思うのはきっと颯汰の
『一日だけ時間をくれた。』
という言葉が頭に引っかかっているからだ。