ーーー会場を出ると、また同じ場所で着替えた。
そしてロビーに戻るとまだ少し目が赤いお姉さんが着替えて待っていた。
「………優梨ちゃん、ありがとう。
きっと颯汰の心に響いたと思う。」
お姉さんは笑った。
自然に、少し悲しそうな笑顔。
「颯汰ね、あんな冷たいこと言ってたけど自分の手をきつく握りしめてた。
颯汰自身もあんなこと言うの辛かったと思う。
だからそれは誤解しないでほしい。」
「………はい。
私も会場出るときに颯汰の表情見て、無理してるのがわかりました。」
「そっか……良かった。」
今度は安心したように笑うお姉さん。
「今日は本当にありが……」
「そこにいたのね!」
お姉さんが話し始めたとき、誰かがそれを制するように叫んだ。
私たちの後ろから聞こえる声だった。
「………お母さん……」
お姉さんが振り向き、表情が強張るのがわかった。
颯汰の、お母さん……?
そう思い、振り向いて颯汰のお母さんを見上げたその瞬間………
乾いた音がロビーに響いた。
一瞬何が起こったのかわからなかったけど、自分の頬がヒリヒリ痛むのがわかった。



