嫌な予感がして、結局颯汰の家に向かった。
颯汰に初めて心を許した日に、颯汰とバスケをした公園を通り家へと目指す。
何回か来たことのあるアパートに着き、颯汰の部屋のインターフォンを鳴らす。
一回目、応答なし。
二回目も応答なし。
今出かけてるのかな。
少し不安が募っていると
「あら?どうしたの?」と、誰かに声をかけられた。
声のした方を向くと、若い女の人が私を不思議そうに見ている。
「あ、えっと………ここに住んでる人に会いに来て……」
「あら、それならもう一昨日に引越ししてたわよ?
荷物とか運んでて、家出た時にたまたま鉢合わせたから少しだけお話したのよね。」
頭が、真っ白になった。
引越し、した……?
じゃあもう颯汰はここにはいないわけで……
「大丈夫?顔色悪いけど。
熱中症とかじゃない?」
「あ、大丈夫です……すいません。」
頭を下げ、私はそこを後にした。
それからどうやって家まで帰って来たのか、あまり覚えていない。
「優梨?どうだったの?」
お母さんの質問にも答えられなかった。