「別に俺は前日でも教えてやれるけど。」
そんな私を見て、彼は笑いながらそう返した。
「え?いいの?」
「いつでもいいけど、まあ前日はさすがに休まないといけないか。
だから公式戦までの間だな。」
まさかそう言われるとは思っておらず、正直驚いた。
「あ、でもそのかわり一つ条件出そうかな。」
「条件……?」
また、嫌な予感しかしない。
「俺のこと名前で呼んで。
いつも“あんた”って言われて距離感じるから嫌なんだよな。」
………どうやら彼は気にしていたらしい。
確かに初めて会った時
『颯汰でいいよ。』って言っていたな。
それでも私は名前で呼ぶのも、苗字で呼ぶのも嫌だったからあんたって呼んでたんだ。
さっき、玄関で彼に話しかける時もなんて呼ぶか迷ったし。
結局『ねぇ』としか言わなかったんだけど。



