少し走っただけなのに、部活を引退してから半年以上経っているなまった体はかなり体力を消耗したみたいだ。息が切れて少し立ちくらみもする。
「まぁ、仕方ないよね……。あとちょっと走れば着くはず!」
私はもう1度走り出した。必死で走っていたせいで、曲がり角から同じように飛び出してきた人に気づかなかった。
「……ひゃっ!? ごめんなさい!」
「ちゃんと周り見ろよ、チービ」
初対面でいきなり暴言を吐くなんて、この人頭がどうかしてるんじゃないの!?
「いきなり飛び出したのは謝ります、ごめんなさい。でも、なんでいきなりそんな暴言吐かれなきゃいけないのよ!」
制服の汚れを払いながら立ち上がり、ぶつかった人の顔をにらんで走り出そうとすると、私はあることに気づいた。
「……あれ、同じ高校? その制服、総北高校の……」
「あぁ、俺が総北高校にいちゃ悪いのかよ」
「なんでよりによって同じ高校なのよ! 本当に朝から運が悪いなぁ」
私はもう1度その人をにらみつけると、今度こそ走り出そうとした。
「……なぁ、俺の名前桐島光汰っていうから覚えといてよ」
少しだけ振り向き、わざとらしくふいっとそっぽを向いたあと、私は今度こそ学校へ向かった。