2日目は、最初から最後まで吹奏楽部にいった。

 音楽室にたどり着いた瞬間、一番最初に私に声をかけてくれたのはやっぱり玄蔵先輩だった。

 昨日とは違う無邪気な笑顔を見ると、あぁ、私は玄蔵先輩に一目惚れしたんだなと確信した。

 「あ、もしかして昨日迷子になったって言う1年生の子?」なんて他の先輩に声をかけられた時には恥ずかしかったけど。

 俯いてしまった私に慌てて謝り、「玄蔵がべらべら喋るから!」と玄蔵先輩が当てつけのように怒られていたことは未だに覚えている。

 それはそれとして。

 たったそれっぽっちの理由で吹奏楽部に入部することを決めた私は、かなり単純だと思う。

 後悔なんてしてない。

 もちろん、希望楽器はバリトンサックス。

 バリトンサックスを希望している人は私以外に誰もおらず、私の手元に黒く大きなサックスケースが届くまで、そう時間はかからなかった。

 私がバリトンサックスに決まった時の玄蔵先輩の、少し嬉しそうな顔を今でも覚えている。