そう言って、私は玄蔵先輩に背を向ける。

 そしてそのまま、その場を離れた。

 真衣先輩と話していた紀夜に近づくと、紀夜は私の状況を察したのか真衣先輩との会話をやめた。

 私に近づくと、小声で話し始める。


「どしたん。玄蔵先輩に振られた?」

「返事待ってくれって言われた……」

「え、いつもすぐに返事するのに?」

「うん……なにか、私やってもたかな?」

「いや、そういう訳じゃないと思うで?」


 紀夜が私の肩を叩き激励を送るように言葉を続ける。


「優衣の言葉の意味をやっとわかってくれたんやって。気長に待ち?」

「……そやね」

「しっかりしいや。前向きに思っていればいいだけやから」


 紀夜はそういうと、また真衣先輩に近づいていった。

 ………だって、不安になるじゃん。

 いつも、すぐに返事をしてくれたのに。

 あんなこと言われたら、期待するじゃん。

 その分、不安も増えたわけだけど。

 これで、何か言われたら。

 私と先輩の関係が崩れてしまう。

 そんな事になるくらいなら、返事なんてしないでくれ、と考えてしまう自分がいた。