クラリネットの1種のバスクラリネットだって4人いる。

 ある程度の努力をすれば、音量を大きくすることなんて容易いし、目立とうと思えば目立つことだってできる。

 バリトンサックスは、音量を大きくするにしても大変だし、数少ない目立つ場所も他のパートがかっさらって行ってしまうことも多々あった。

 なのにいつも2人は、お互いを支えながら、他のパートが目立てるように考えて演奏をしてくれた。

 2人がお互いの顔を見ているときの、嬉しそうな笑顔ったらありゃしない。

 山本先輩のあんな笑顔、1度だって向けられたことないもん。

 あの笑顔を引き出せるのは、優衣以外にいないだろうな。

 だから、優衣には幸せになって欲しい。

 私は、ほかの先輩のファイルにメッセージを書きながら、2人が早く両想いになればいいのにな、なんて考えた。