私は柴崎紀夜(シバサキキヨ)。

 ユーフォニウム担当の2年生。

 同じく2年生、バリトンサックス担当、新巻優衣の親友。

 初めて会ったのは1年生の時に合同授業で隣の席になったことだった。

 長ったらしい先生のよく分からない説明をぼうっと聞いていたら、優衣が紙の切れ端を吸っと渡してきた。

 それを手に取り見ると、中には『暇だよねぇ』と一言だけ書かれていた。

 それを見た私は思わず笑ってしまって、同じようにノートの切れ端に『分かる、めっちゃ暇』と書いて渡したんだっけ。

 そこから、仲良くなったんだ。

 吹奏楽部に入るって聞いた時は驚いたし、なにより運命を感じた。

 だって、たまたま隣の席になった子が同じ部活に入るだなんて、考えられなかったから。

 なんでこの子と同じクラスになれなかったんたろうって、本当に悔やしかったんだ。

 2年生でも見事にクラスは分かれてしまって、落ち込んでしまったことは記憶に新しい。

 そんな優衣は、同じバリトンサックス担当の3年生、山本玄蔵先輩に絶賛片想い中だ。

 何度も告白はしてるみたいなんだけど、山本先輩、ちっとも振り向いてくれないみたい。

 でも、山本先輩の反応を見ている限り、山本先輩も優衣のことが好きなんだと思う。

 つまり、2人は絶賛両片想い中ってことだ。