こぼれた涙が木の床に落ちて、じんわりとシミになっていく。


『引退しちゃ嫌だ』


 その言葉に、俺は抑えていた涙がこみ上げてくる。

 1週間前あれだけ言っていたのに、結局は俺のために泣いてる。

 それが、嬉しかった。

 ……今まで一緒に頑張ってきたもんね。

 ……明日から1人になるもんね。


「玄蔵先輩、今まで、ありがとうございました」

「優衣ちゃん、こちらこそ、ありがとうね」

「玄蔵先輩……好きです」


 涙を流しながら俺を見つめる。


「……俺も好きだよ」


 優衣ちゃんは少し驚いた顔をすると、いつもの見慣れた笑顔を見せる。

 これが、優衣ちゃんの望んでいる答えかは分からないけれど。

 俺の中にある気持ちがちゃんと分かるまで。

 俺は、この返事をし続ける。