放課後、音楽準備室。

 2人で使うには広すぎるこの教室に、バリトンサックスの音が響く。

 一息つくと、横を見て。


「玄蔵(ゲンゾウ)先輩、好きです」


 私は、隣で譜面を読んでいる先輩に唐突に告白をする。

 驚いた顔で玄蔵先輩はこちらを向き、私をじっと見つめてきた。


 ……あ、これは伝わってないや。


 私はそう確信する。


「俺も、優衣ちゃんのことは好きやで?」


 ほら、やっぱり。

 相変わらずの返答に、心の中でため息を着く。

 ……先輩の"好き"は。

 後輩としての"好き"なのだろう。

 私の"好き"は。

 1人の男性としての"好き"なのに。

 まあ、鈍感なのは吹奏楽部に入部した時から知ってる。

 玄蔵先輩、爽やか系のイケメンだからよく告白をされていた。

 なのに、彼は。