これは、嬉しき物語である。
一人の魔王が処刑台へ上がっていった。
魔王と言ってもまだ若い少年で目は澄んだ藍色に髪は青黒い色をしていた。
 処刑台の周りを取り囲む民衆は魔王に罵声を浴びせたり、ものを投げたりした。
「サッサと死ね!クズ!」
「お前のせいで息子は…」
しかし、魔王は堂々としていた。
まるで死を恐れていないかのように見えた。
やがて、魔王の首はギロチンの下に固定された。
隣に立つ青年(勇者)は剣を掲げ民衆に告ぐ。「これより、奴の首を刎ねよう。」
刃は落とされた。
 「愛してる。」
血が飛び跳ねた。
   ____たが魔王が死ぬことは無かった。
         
さっきまで、崩れることが無かった美貌が一気に絶望ヘと変化する。
 「え…?御主逃げたんじゃ…」
 「ごめんな。約束守れないみたいだ」
魔王は怒り狂った。
  
      
      「嗚呼、我が愛しき人よ。」


これは悲しき昔話である。