君がいなくなったって【短編】




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「……ナ、ナナ、ナナ!」


頭を何かに叩かれて目が覚めた。


いつのまにか空は暗くなっていて、まさかの公園のベンチで寝てしまったことに気づく。


「こんの、バカヤロウ!」


へ、と言うひまもなく誰かの手でこめかみをぐっと押された。


「うぎゃあ!痛い痛い痛い!」


まだ覚醒しきれていない頭と、ぼんやりとしか見えない視界。

だけど、なんでだろう。

涙が溢れて止まらない。


「なんでここにいんだよバカヤロウ!
こんなとこで無防備に寝るなバカヤロウ!
襲われてーのかバカヤロウ!
もっと自分が女だって自覚持てバカヤロウ!」


そう言いながらヒロは最後にぐっと一押しして、ゆっくり手を離し、私の顔を覗き込んで。


「は?ちょ、なんで泣くんだよ!
ごめ、痛かったよな、悪かった」


困った顔で頭を撫でてくれた。


ヒロが、いる。


ヒロが、私に触れてる。


ヒロ、ヒロ、ヒロ。


「ヒ…………」


「あー、ヒロ!こんなとこにいた!
今からみんなでいつものとこ行こうって言ってたじゃん!私がいながらナンパ?」


…………ロ。