君がいなくなったって【短編】

「だって、辛いし会えないしそっけないし。
だったらいっそ友達に戻ったほうが今よりずっといいんじゃないかって思った」


「………ごめん」


小さな声がまた震えていて、ハッとして首を横に降る。


「謝らないで。
私ももっと、素直にそう言えばよかった」


そうだ。

仕方ないや、なんて割り切ったふりをして、隠して、なにも言わなかった。


「だからお互い様。
お互いにちょっとずつなにかが足りてなかったんだよ」


「……うん」


「だけど私、ヒロが好き。
ヒロがいなきゃ、幸せになれない」


え、と掠れた声がヒロの口から溢れる。

それから鼻をすする音が聞こえて、そのあと「ごめん、今日の俺涙のコントロールできない」なんて言うから、笑ってしまう。


「いいよ、そんなヒロめったに見れないし」


「やめろ、あんま見んな。
男が泣くとかダッセェ」


「なんで、いいじゃん」


顔を見合わせて、ふふっとどちらからともなく笑う。

そのままゆっくり近づいて、ふわりと2人の唇が重なった。

お互いの涙で少しだけ塩辛いキス。


「今日からも、よろしくお願いします」


「はい、幸せにします」


すれ違って、すれ違って、見つけたのは本当の気持ち。


君が好き。


君がいるから、幸せなんだ。








ーendー