君がいなくなったって【短編】

「私、もっとヒロと会いたい」


「うん」


頬を撫でられながら、近距離のまま、優しい視線を受けながら話す。


「一日中じゃなくてもいい。
1時間でも、会えるなら」


「うん」


「場所だって、特別じゃなくていい。
なんなら昨日の公園でもいいよ」


「それはちょっと嫌かも」


「なんで」


「ナナを学校のやつらに見せたくないから。
昨日だって、陸部のやつらが公園で美少女が寝てるなんて騒いで連れていかれて見たらナナだったし。
せめて連絡先交換したいとか言うあいつらのこと追い返すの大変だったんだからな。
もっと自分が可愛いんだって自覚持って」


訴えかけるような目で見られて、思わず頷く。

ヒロが突然甘くなったことに、脳内はパニックだ。


「ヒロ?急にどうしたの?」


「こんなのカッコ悪いと思って、今までは隠してたけど。
ナナを幸せにできるなら、かっこ悪くてもなんでもいいやと思って」


その発言はかっこよすぎなんじゃない………?

嬉しくて、ヒロに抱きつく。

熱のせいで高い体温が、なぜか少し心地いい。


「ヒロ、私、本気で別れようとしてた」


「………うん」


ギュ、とヒロの腕に力がこもって、2人の距離がまた近くなる。