君がいなくなったって【短編】

「わかってたのに、ナナなら大丈夫だって勝手に思い込んで、ナナならわかってくれるって言い訳して、そっけなくして、自分のしたいことばっかり優先した」


だけど。

震える声で、ヒロは続ける。


「昨日、ナナにあんなこと言わせたのは他の誰でもない俺なんだって思ったら、俺、最低だって気づいた」


ヒロと目が合う。

昨日と同じように頬を両手で包まれて、顔が赤くなっていく。


「俺がいなくなったって、ナナは幸せになれるかもしれないけど。

でも、ナナを幸せにするのは俺がいい」


気づいたら、私の頬も濡れていた。

ヒロの親指が優しく撫でて、涙を拭ってくれる。


「いっぱい苦しくさせてごめん。
だけど俺、やっぱりどうしてもナナが好き」


熱があるからかな。

ヒロがやけに素直だ。


告白された時以来、人生で2度目のヒロからの好き。

別れようかな、とか、これ以上辛くなるのは嫌だ、とか散々考えていたのに。

ヒロからのそのたった一言だけで、全部消えてなくなってしまった。