君がいなくなったって【短編】




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ベッドで眠るヒロの目元は赤くなっていて、私がそうさせたんだと思うと、チクリと胸が痛む。


「にしても、なんで私がヒロの部屋に」


ここはヒロの部屋。

手にはヨウさんから託されたプリント。


『俺たち部活抜け出して来てて、すぐ戻らないといけないんです。
なんで、そのプリントヒロに渡しに行ってもらえませんか』


そう言ったヨウさんは、有無を言わせずプリントを渡し、ミノリさんの手首を掴んで、驚きの速さで走り去った。


あまりの驚きに目を瞬かせている私の手をリコは離して、『じゃ、私帰るわ』とあっさり帰っていった。


残された私はチラッとプリントを見て、その提出期限が明日だということを知り、持って行かざるを得なくなった。


「はあ」


小さくため息を漏らす。

今この家には私とヒロの2人しかいない。


ヒロの家に着いた時、ちょうど玄関から出て来たのはヒロのお母さん。


『あらナナミちゃん。
ヒロのお見舞いに来てくれたの?
ならちょうどよかった。ちょっとヒロの面倒見ててくれない?
私これから仕事で、ヒロを1人にするの不安だったのよ。
夜遅くにはならないから、お願い!』


あれよあれよと流されているうちに、気づけばヒロの部屋にいて、ヒロのお母さんは『うちにあるものはなんでも遠慮なく使ってね』と仕事場に向かっていった。