君がいなくなったって【短編】

「私、ヒロが女の子とあんなに話してるところ初めて見て、思わずからかっちゃって。
そしたらナナミちゃんは走っていっちゃうし、ヒロも追いかけたと思ったらこの世の終わりみたいな顔して帰ってくるし」


ヨウさんの後ろから、ミノリさんが昨日のことを教えてくれる。


ミノリさんは、ヨウさんと付き合ってるの?


この世の終わりみたいな顔。

そんな顔をさせたのは、他でもない私だ。


「今日、ヒロ学校休んでて。
とんでもないこと言っちゃったんだって気づいて、ヨウに相談して、ナナミちゃんに会いに来ました。
昨日はごめんなさい!」


丁寧に頭を下げたミノリさん。


「私こそごめんなさい」


同じように頭を下げると、ミノリさんは「へ?え?」と困惑したような声をあげた。


「私、勘違いして。
私たちの問題なのに、ミノリさんを巻き込んでしまってごめんなさい。
教えてくれてありがとう」


「バカ、あんた優しすぎ」


リコが不満そうに小さくこぼすけど、ミノリさんが「うわぁー!本当にごめんね!ありがとう!」と泣きそうになりながら笑っているから、これで正解なんだと思う。


「あの、ところで」


場が丸く収まりかけたところで、ヨウさんが声をあげた。


「ナナミさんに、お願いがあるんですけど」