君がいなくなったって【短編】

靴を履き替えて、正門に向かう。


「あーーーー!いたーーーーーーーー!!」


叫び声が聞こえて来た、かと思うと体に衝撃がはしった。


「ナ、ナナミちゃん!
ナナミちゃんだよね!私、あの、ナナミちゃん!ああどうしよう!ナナミちゃん!」


「ミノリ、落ち着け」


ヒロと同じ制服を着た男子に首根っこを掴まれて私から引き剥がされた人を見て、え、と声が漏れる。

思わずリコと繋いだ手に力を入れると、リコは私を庇うように前に出て「誰ですか?」と問いかけた。


「あの、私ヒロと同じ陸上部の者です!
昨日はあの、私がとんでもないことを言っちゃって本当にどうしようかと思ってもうパニックでごめんなさい!」


サラリ、と舞うショートカット。


昨日のあの子が目の前にいる。


彼女の首根っこを掴んでいる男子が「ミノリ、お前はもう黙っとけ」と彼女を後ろに下がらせた。


「俺もヒロと同じ部活してるヨウです。
昨日はミノリがバカなことを言ったみたいでほんとすいません」


なぜか頭を下げたヨウさんに、首をかしげる。


「ミノリは、俺の彼女です」


「へ?」

「は?」


私とリコの声が、見事にシンクロした。