微笑む女『短編』

 

『また、電話する。』


いつもの笑顔を残して、男は軽やかに帰って行く。


わたしは一人、部屋に残される。


『…わたし一人、じゃないわね。ねぇ?美和ちゃん。』


男が帰った玄関の鍵をかけながら、ベッドルームの中の暗闇を見て女は言った。



ベッドルームの闇の中で、今日も美和は女を見つめていた。


『…父親なら、今、帰ったわよ。』


女は優しく笑いながら、闇の中の美和を睨んだ。