「俺さ、怪我してからまだ家族と病院のスタッフとそれから同じ部屋の患者さんとしか話してないんだよ」

ぽつり、そしてぽつりと敦也くんが言葉を紡いでいく。


「外の世界は知らない。今の俺は翼の折れた鳥みたいなもんだから」

私の心に敦也くんの言葉1つずつが痛いほどに刺さっていく。


「怪我する前は仲いい奴らと毎日つるんで学校行って、勉強して、夜中まで遊んでた」

敦也くんの遊ぶ姿が目に浮かんでくる。

「女の子とだって、普通に恋愛して、キスして、それなりに毎日楽しく過ごしてたんだ」

「うん」

「自分でいうのもなんだけど、結構チャラくてさ。『葵ちゃん』みたいにすぐに下の名前で呼び合ってみたりして」

「うん」

一瞬の間があって、敦也くんの表情が曇る。

「だけど、今は外が怖い。外の世界に出るのが怖い」

それは敦也くんの心の叫びだった。