翼の折れた鳥たちは

◇◇◇

「葵ちゃん」

はぁぁぁ。

「ねぇっ!!葵ちゃん、聞いてる?」

「えっ?!はいっ!!聞いてますよっ!!もちろんですよ」

頬を膨らませながら敦也くんが私を怪訝そうな表情で見つめている。

本当は、全く聞いていなかった。

敦也くんが昨日から『葵ちゃん』なんて呼ぶから噂好きの看護師たちになぜか私と敦也くんが付き合い始めたなんてあらぬ噂が立ち始めた。

もちろん、全力で否定もした。


「絶対、嘘だ。何、なんか悩んでる?」

あぁ、こんなこと敦也くんには言えないし。

悩みがあるなんて担当の患者さんにバレバレな顔してリハビリしてるなんて最悪だ、私。