「すみません。毎日、聞いてます」

ようやく落ち着いた榎田さんが、少し頬を赤らめながらそんなことを言うもんだから、私まで顔に熱を帯びてくる。


「榎田さんが聞いてるなんて思ってもなくて、私……」

あぁ、めっちゃ恥ずかしい。

聞かれてるって知っていれば、もっと選曲だってあったのに。
昨日だって、昭和歌謡の人生を悲観した歌歌っちゃったし。


恥ずかしさと後悔がふつふつと胸の奥から沸き起こってくる。


「歌うまいのに、どうして歌手になろうと思わなかったのかなって思って」

言葉を選ぶようにしながら、榎田さんがきっと耳まで真っ赤になっているであろう私にもう一度問いかける。