「まっ、まぁ、よくある理学療法士になりたい理由の1つよね。理学療法士あるある的な」

わざとらしく肩を竦めて、冗談めかしてみる。


「歌手になろうとは?」

「へっ?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

「なっ、何で?」


想定外の答えが返ってきて、声を上擦らせながら質問に質問で返事をしてしまった。

「いつも夕方、屋上で歌ってるから」

「き、聞こえてるの?」

すると私の反応に、とうとう榎田さんは肩を震わせながら笑い始めた。

こんなに表情を崩してケラケラと笑う榎田さんを私は見たことがなくて、信じられないものでも見るかのように、思わず彼の顔に見入ってしまった。

榎田さんの笑顔は、まるで太陽のようだったから。