翼の折れた鳥たちは


榎田さんから私に質問されるのは、これが初めてだ。

リハビリのことでもない、私自身のこと。だから、答えに詰まってしまう。


「高校生の頃、私のおばあちゃんが脳梗塞になったの。家族みんな『もう駄目だ』って落ち込んだんだけど、リハビリでどんどん良くなるおばあちゃんの姿を見て、素敵な仕事だなって思ったの」


いつもなら患者さんには敬語で喋るのに、気が付いたら友達に話すように喋ってしまっていることに気が付いたのは、喋り終わって随分時間が経った後のこと。


「誰かの希望に寄り添うことの出来る理学療法士って仕事は素敵だなって思ったの」

私の話を榎田さんは真っすぐな視線で見つめている。

なんだかその視線がくすぐったい。